安倍晋三首相「憲法96条は改正すべき」再び意欲を表明

安倍晋三首相は憲法96条について「たった3分の1の国会議員が反対することで、国民投票で議論する機会を奪っている。(改正の)必要性を訴えていきたい」と述べ、一時トーンダウンしていた憲法96条の改正に再び意欲を示した。
時事通信社

安倍晋三首相は2月4日の衆議院予算委員会で、憲法改正の発議要件を定めた憲法96条について「たった3分の1の国会議員が反対することで、国民投票で議論する機会を奪っている。世論調査で十分な賛成を得ていないが、国民的支持を得る努力をして、(改正の)必要性を訴えていきたい」と述べ、一時トーンダウンしていた憲法96条の改正に再び意欲を示した。日本維新の会の小沢鋭仁議員の質問に答えた。

安倍首相は憲法について、憲法は、国の形あるいは未来や理想を語るものだと思うと述べたうえで、改正の必要性について3つの理由をあげた。現行憲法は占領軍の強い影響を受けたものであること、憲法が成立してから長い年月が経っているため時代にそぐわない条文もあること、憲法は自身で書いてこそ未来が切り開けるものであることの3点だ。

また、これまで憲法が改正されなかった原因については、国民の間で、憲法に指一本触れてはならないんだという気分が醸成されていたことと、憲法96条の存在をあげた。憲法96条は各議院の総議員の3分の2以上の賛成と、国民投票で過半数以上の賛成がないと、憲法改正できないと定めたもの。

小沢議員は、これまでに安倍首相が憲法96条について述べてきた内容が変わってきていると分析。2013年の5月の連休明けから、96条改正に関する首相の発言がトーンダウンしていると述べ、この変化には何か理由があるのかと問うた。

自民党は政権与党に返り咲いた2012年冬の総選挙で、政権公約に96条の先行改正を掲げたほか、安倍晋三首相が就任直後の衆院本会議で、憲法96条の改正に取り組む方針を明言していた。

しかし、安倍首相は、参院選前の6月16日には訪問先のポーランドで以下のように記者団の質問に答え、条文によって憲法改正の発議要件を引き下げるなど、トーンダウンしていた。

安倍晋三首相が憲法96条が定める改正の発議要件について「平和主義、基本的人権、国民主権は3分の2に据え置くことも含めて議論していく」と表明した。条文ごとに要件に差をつける可能性を示し、96条先行改正に慎重な公明党に配慮した。

(朝日新聞デジタル「首相、96条戦略転換 9条などの改憲条件「3分の2維持も」 維新失速、公明に秋波」より 2013/06/18)

背景には、国民の支持が広がらなかったことに加え、以下のように改憲派の憲法学者からも首相の方針を批判されたことがあった。

私は9条改正を訴える改憲論者だ。自民党が憲法改正草案を出したことは評価したい。たたき台がないと議論にならない。だが、党で決めたのなら、その内容で(改正の発議に必要な衆参両院で総議員の)「3分の2以上」を形成する努力をすべきだ。改憲政党と言いながら、長年改正を迂回(うかい)し解釈改憲でごまかしてきた責任は自民党にある。

安倍首相は、愛国の義務などと言って国民に受け入れられないと思うと、96条を改正して「過半数」で改憲できるようにしようとしている。権力参加に関心のある日本維新の会を利用し、ひとたび改憲のハードルを下げれば、あとは過半数で押し切れる。「中身では意見が割れるが、手続きを変えるだけなら3分の2が集まる。だから96条を変えよう」という発想だ。

朝日新聞デジタル『96条改正は「裏口入学」。憲法の破壊だ 小林節・慶大教授〈憲法学〉』より 2013/05/04)

安倍首相は自身の発言の変化について、小沢議員の答弁には答えなかったが、現状の96条の問題点について、国民が憲法を自分たちで決めることができない状態になっていると指摘。「国会議員の3分の1の反対が、国民投票で議論する機会を奪う。もし国民の6割7割が望んでいても、それを拒否してしまうのはおかしいだろうと思うのが普通だろう。そういう意味では96条は改正すべきだと思う」と述べた。

また、国民投票法の改正についても安倍首相は、国民投票法は憲法改正の土俵を作っていくものであり、与党のリーダーシップにおいて議論を加速させていきたいと話した。

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