日本人の研究が2017年の「世界で影響を与えた科学論文」トップ3にランクイン

女性内科医の方が、男性内科医より「腕がいい」ことを示唆する論文を発表、話題を呼んだ
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Nikada via Getty Images

日本人が手がけた研究論文が、2017年に最く影響力が大きい論文ランキングの第3位に入った。12日、科学論文のインパクトを評価するイギリスの「オルトメトリク」社が発表した。内科の患者を診る場合、女性医師の方が男性医師より「腕がいい」ことを示唆する研究結果で、米カリフォルニア大学ロサンゼルス校の津川友介助教らによるもの。

研究は、2011~2014年の間に内科系の病気で入院したアメリカの65歳以上の高齢患者約150万人の予後がどうなったのかを、患者の重症度や病院の医療の質の影響を取り除いた上で、担当医の性別で比べた。

入院後30日以内の死亡率は男性医師が11.5%、女性医師は11.1%で、女性医師の患者の方が死亡率が低かった。退院後30日以内の再入院率も、女性医師の担当患者の方が低かった。

女性医師の方が軽症患者を多く診ている可能性もあるため、重症度に関係なく入院した患者を診ているシフト勤務の「ホスピタリスト」と呼ばれる内科医のデータを解析した。それでもやはり女性医師の担当患者の方が死亡率、再入院率ともに低いという結果だった。

津川さんによると、一見すると男性医師と女性医師の患者の死亡率の差は小さいように見えるものの、性別による死亡率の違いは、米国での2003~2013年の高齢者の死亡率の低下の度合いと「ほぼ同じレベル」であり、決して無視できるものではないと言う。

「男性医師と女性医師の担当患者の死亡率の差はわずかなようにみえますが、患者の死亡率を3~4%下げることは非常に難しい。医療技術が進歩し、新薬が多く出る10年間の医療の進歩で改善された死亡率の度合いと、男女の医師の患者の死亡率の差が同じというのはとても考えさせられる数字です」

なぜ女性医師の方が、成績がいいのか。

津川さんは「女性医師の方が治療指針を守り、患者の話をよく聞き、専門家に相談する傾向が高いことは過去の研究でわかっている。また女性の方がリスクを避けがちな傾向は経済学や心理学の論文でも指摘されている。そういったことが関連しているのでは」とみる。

今回、津川たちの論文の影響度を評価したオルトメトリク社は、2016年12月~2017年11月の1年間に世界中の科学雑誌に載った英語論文約220万本を対象に、どれだけ読まれたか指標を作り、評価した。

評価の基準は、他の論文への引用の度合い、閲覧数、ニュースメディアでの紹介数のほか、TwitterやFacebookなどSNSでどれほど話題になったかなども含まれている。それらを総合的に評価し、点数化して比較、トップ100を公表している。

2017年の「最も影響の大きかった論文」の3位に論文が入ったことについて、ハフポスト日本版の取材に津川さんはメールでこう述べた。

「これほど多くの人が『医師の性別』に関心を持っていたのは正直驚いた。患者さんからすると、担当医が女性だと分かったときに心配に思っていた人がいたからかもしれません。医師の関心も高かったようです。他の職業同様、女性医師は、男性医師よりも給与が低かったり、昇進が遅かったり不公平な扱いを受けていることが欧米では社会問題となっています。女性医師の処遇改善の判断材料の一つになったという連絡も受けています」

■オルトメトリクが選んだ2017年の「影響力の大きい論文」ランキング

3位 女性医師のほうが男性医師よりも患者の死亡率、再入院率が低いことを明らかにした論文

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