「世界の健康に対する脅威」トップ10に『ワクチン忌避』が選ばれる

世界保健機構(WHO)が発表。非科学的な論拠から子どもなどにワクチンを打たせない状況が世界各地で起きています。
写真はワクチン接種のイメージ画像です
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Image Source via Getty Images

ワクチンの予防接種を嫌がることは、デング熱やエボラ出血熱などと並ぶくらい、世界の健康に対する脅威となっている。そんな声明を 世界保健機構(WHO)が出した。2019年に注目される「世界の健康に対する10の脅威」の一つとして、「ワクチン忌避」を挙げた

ワクチンの予防接種によって麻疹やポリオ、子宮頸がんの原因になるHPV(ヒトパピローマウイルス)の感染を予防することができる。だが、非科学的な論拠から子どもなどにワクチンを打たせない状況が世界各地で起きており、感染症対策への脅威になっていると指摘されている。

ワクチン忌避について、WHOは「脅威」のひとつとした
ワクチン忌避について、WHOは「脅威」のひとつとした
WHO公式サイトより

ワクチンに対する誤った情報を信じ、命を脅威にさらしてしまう

WHOによると、ワクチンは「病気を回避する、最も費用対効果の高い方法の1つ」という。

しかし近年、自然派育児、ホメオパシーなどを信じる人たちの中で「ワクチン忌避」が広がっている。「子どもにワクチンを打つと自閉症になる」と根強く信じる人たちもいる。

しかし、ワクチンと自閉症についての関連性は、研究によって明確に否定されている

ワクチン忌避とは、疾病予防のためにワクチンが打てる環境であるにもかかわらず、意図的にワクチン接種を拒否している活動のこと。

ワクチンを忌避する人たちが理由にしている論拠は「自然に反する」「副作用で命が危ない」などといった根拠のない情報だ。

WHOはそうしたワクチン忌避を選ぶ背景について「自己満足であったり、ワクチンへのアクセスが不便だったり、または不信感が根底にある」と説明した。

また日本国内では、科学的には裏付けされていないものの「副反応に懸念がある」という声が上がり、厚労省が2013年6月に子宮頸がんワクチンの積極的推奨を差し控えた。これによりワクチン接種率は約70%から1%未満へと接種率が著しく下がった。

こうした日本の状況について、WHOは以前から「弱い証拠に基づいた政策決定」と憂慮している。

ワクチンによって年間200~300万人の命が守られている

WHOの推計によると、ワクチンによって年間200~300万人の命が救われている。世界的にワクチン接種の普及率が上がれば、さらに150万人ほどの命が救われる可能性があるという。

またワクチン忌避だけが原因とは断言できないものの、麻疹が根絶されたと思われた国でも復活していることを挙げた。

WHOは「全世界で、麻疹が30%増加している。増加の理由は複雑でひとくくりにはできないが、麻疹を撲滅したとされる国々で、『麻疹の復活』現象が起きている」という。

例えば、2018年8月からワクチン接種に関する政令を廃止する法案を通したイタリアでは、麻疹患者が急増。ヨーロッパ全体でも、過去10年で最悪の感染者数を記録した。

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