「日本はプラスチック廃棄物の処理を海外に押し付けている」 専門家が指摘⇒今できることについて聞いてみた。

年間およそ150万トンのゴミが海外に輸出されていると知っている人はどのくらいいるだろうか。
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curtoicurto via Getty Images

私たちは日頃から、ペットボトル飲料、コンビニ弁当の容器、レジ袋、洗剤の容器など、多くのプラスチック製品に囲まれた生活をしている。同時に、大量のプラスチック廃棄物を出している。

今、そんな生活を見直すべき時がきている。

5月11日、スイス・ジュネーブで開催された国連環境計画(UNEP)の会議で、プラスチック廃棄物の輸出を制限する条約、「有害廃棄物の国境を超える移動及びその処分の規制に関するバーゼル条約」(以下、バーゼル条約)の改正案に日本を含む180カ国近くが合意した。

これにより、日本にある大量のプラスチック廃棄物が行き場を失うことになりそうなのだ。

ここ数年、世界中で脱プラスチックの流れが加速。日本も、プラスチック廃棄物の処分方法について見直しが迫られている。

プラスチック廃棄物を巡り、いま何が起きているのか?日本における課題と、私たちができることとは何なのか?ハフポスト日本版のネット番組「ハフトーク(NewsX)」で、海洋プラスチック汚染を研究している東京農工大学・高田秀重教授に話を聞いた。

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番組にSkypeで出演した東京農工大学・高田秀重教授

プラスチック廃棄物の処理を海外に押し付けてきた日本

私たちが普段、何気なく捨てているプラスチックごみ。それらは国内で正しくリサイクルされ、再利用されていると思っている人もいるかもしれないが、高田教授は「そうではない」と話す。

《実は日本は、プラスチック廃棄物の多くを、リサイクルとして海外に輸出しています。その数は、年間およそ150万トンに及びます。リサイクル処理には手間がかかるため、その人件費を日本では捻出できないことから人件費の安い海外に輸出しているのが現状です。》

つまり、「日本はプラスチック廃棄物の処理を海外に押し付けている」と指摘する。

《しかし、主な輸出先であった中国が2018年、工業由来の廃プラスチックの輸入を停止しました。理由のひとつは、経済成長と共に中国国内のゴミも増えたので処理が追い付かなくなったこと。もうひとつは、環境汚染に繋がっていたことです。プラスチック廃棄物の多くは、食べ残しが付いていたり、実際には資源としてリサイクルしにくいものばかりなので、業者は不法投棄をしたり、有害物質を焼却したり、海に流出させていました。それによって深刻な環境問題が起きていました。これは中国に限らず、他の国でも起きています。》

中国に輸出できなくなった日本は、タイやマレーシア、ベトナムなど、同じく人件費の安いアジアの国を中心に輸出をするようになった。しかし、それらの国でも輸入規制は進みつつあるという。 

そんな中、今回のバーゼル条約の改正により、「日本が今後、プラスチック廃棄物の輸出をすること自体が事実上難しくなる」と高田教授は解説する。

《今回の改正により、汚れたプラスチック廃棄物について、輸入国政府の同意がなければ輸出できなくなります。また、日本と同じレベルの処理体制でないと輸出ができなくなります。

現在のプラスチック廃棄物の多くが食べ物の残りカスなど汚れたプラスチックであり、また、現在輸出している国々の中には日本と同じレベルの処理体制である国はほぼないことから、今後の日本では、多くのプラスチック廃棄物が行き場を失うことになるのです。》

(編集部注:自治体によってプラスチック廃棄物の処理方法は異なります。)

世界で進む“脱プラスチック”の流れ

プラスチック廃棄物の輸入規制が進む背景には、今世界中で起きている”海洋プラスチック問題”がある、と高田教授は指摘する。

《プラスチック廃棄物が正しく処理されないことによる環境問題の中でも、かなり深刻な問題が、海洋汚染です。プラスチックは自然分解されないので、海に流出したプラスチックは、紫外線などにより微細なマイクロプラスチックとなり、海洋全体に漂い続けています。それにより、小魚などに取り込まれ、生態系に悪影響を及ぼしています。》

近年、魚介類からマイクロプラスチックが検出されたと話題になったのも、こうしたプラスチック廃棄物の処理方法に問題があるからだという。

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イメージ写真
Sergi Escribano via Getty Images

プラスチック廃棄物による様々な環境問題に対して、輸入規制と同時に世界中で進んでいるのが、“脱プラスチック”の流れだ。「そもそもプラスチック製品自体を使わないようにしよう」という動きである。

2018年、アメリカの大手コーヒーチェーン・スターバックスが、2020年までに世界中の全店舗で、プラスチック製の使い捨てストローを全廃すると発表したことは記憶に新しい。

世界中で、プラスチックレジ袋の有料化もしくは使用禁止、公共施設におけるペットボトルの販売禁止、プラスチックストローの禁止、もしくは紙や天然素材で代用するなどの動きが加速している。

環境省によると、世界でレジ袋を「有料化・課税」しているのは、韓国、ベトナム、インドネシアなど25の国と地域。「製造・販売・使用等の禁止」としているのは、中国、台湾、インド、アフリカ25カ国など41カ国。フランスでは、プラスチック製の容器とカトラリーの販売を禁止している。イギリスでは、プラスチック製ストローの販売を禁止している。

私たちにできることとは?

では今、世界規模で起きている問題に対して、私たちひとりひとりができることは何だろうか。高田教授に聞いてみた。

《一番はなるべくプラスチックを使わないように意識することではないでしょうか。ペットボトルを買わなくて済むように水筒を持ち歩くとか、お弁当を家から作って持っていくようにするとか、少しづつで良いので日々の生活の中で意識することが大事だと思います。そうした意識は、環境問題にとっても良いことですし、生活スタイルを見直すためにも良いことだと思うので、みなさんにぜひ意識してほしいと思います。》

この日スタジオにゲスト出演していた出版社ディスカヴァー・トゥエンティワンの干場弓子社長は「わかってはいても現実問題、行動を変えるのはなかなか難しい部分もあると思う」と語った上で、「メディアや出版ができることは何でしょうか?」と問いかけた。これに対して高田教授は、報道の重要性を以下のように語った。

《メディアでたくさん報道していくということも大切だと考えています。例えば、適切にリサイクルされている思われているプラスチックが実は海外に大量に輸出されているという事実など、本当は何が起きているのか、誰でも理解できるようにわかりやすい形で報道することで、消費者の、問題意識を広げる手助けをしていただければと思います。》

消費者としてできること。メディアとしてできること。ちょっとした意識の変化が、世界に大きな影響をもたらすのかもしれない。

【文:湯浅裕子 @hirokoyuasa/ 編集:南 麻理江 @scmariesc

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