レペゼン地球・DJ社長に聞いた「あの、でっち上げセクハラ炎上、なんだったんですか?」

なぜDJ社長は「セクハラを利用してプロモーションをする」ことを平気で行ったのか。
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みなさんは「レペゼン地球」を知っているだろうか? 10代20代に絶大なるファンを持つ音楽グループ。リーダーのDJ社長は、夢の独白で一躍有名になった。

YouTubeのチャンネル登録者数は200万人を突破。

TVで、お笑い芸人の宮迫博之さんらの記者会見が報じられていた同じ日に、Twitterのトレンドワードの1位は、実は、DJ社長だった。

2019年7月17日、人気DJ集団「レペゼン地球」の事務所に所属するジャスミンさんが、DJ社長から「LINEで何度もホテルに誘われて困っている、事務所を辞める」とツイート。

このツイートはまたたく間に拡散し、多くの人々の怒りに火を点けた。ところがその3日後、DJ社長は「このツイートは嘘で、ネタだった」というPVをアップ。 

人気ロックバンド「マキシマム ザ ホルモン」が、「パワハラは絶対ダメだ」と言い、DJ社長が土下座で謝罪する形で作成された動画だったが、マキシマム ザ ホルモンまで大炎上することになった。

PVは削除されたが、セクハラを炎上商法に利用したことについて、多くの人の怒りは収まる気配を見せず、DJ社長率いるレペゼン地球は、9月7日に開催予定だったメットライフドーム(埼玉県所沢市)でのライブを中止することになった。

DJ社長は10月24日朝、騒動を謝罪する動画をアップした。動画では「僕のやり方が間違っていた。申し訳ありません」と述べている。

なぜDJ社長は「セクハラを利用してプロモーションをする」ことを平気で行ったのか。誰も止めなかったのか。動画を見るだけでは分からない部分もある。

『ハラスメントの境界線』(中公新書ラクレ)の著者で、セクハラの問題に詳しい白河桃子さんは9月18日、DJ社長に会って、時間をかけて話をしたという。そのときのやり取りをハフポスト日本版に寄稿した。

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人気DJ集団「レペゼン地球」のリーダーDJ社長
Mariko Shimbo

白河:はじめまして。

この件は、周りの女性、特に若い女性たちがとにかく本気で、怒っていたんですよ。でも、そもそも、なぜあんなことをやろうと思ったのか、意味がわからなすぎて、今日はそのことについて、色々、伺いたいです。 

DJ社長:はじめまして。はい。

多くの方が怒ってらっしゃるのは、もちろん知っています。僕は、今まで、ちゃんとした対談をしたことなくて。ちょっと緊張してて、うまく答えられるかわからないですが….。

白河:あ、DJ社長率いるレペゼン地球の音楽は、素直にいいなと思いました。対談することになって、動画をいっぱい見ました。「リメンバー」とか「メモリー」、「-0-tokyo」(ゼロ東京)の曲好きでしたよ。

早速なのですが、なぜ、あのようなセクハラでっち上げみたいなことをしてしまったのか伺いたくて。

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Mariko Shimbo

 

DJ社長:あの….。正直に言ってもいいですか…。

えっと、単に動画を見ればみんなドッキリだって、わかって笑ってくれると思っていたんです。

白河:笑ってくれる?

DJ社長:はい。ジャスミンが僕らと作った嘘のLINEをTwitterで、出す。次の日に僕が坊主になって、謝罪する。世間が「え?」と騒ぐ。その次の日に、自分が坊主頭のかつらをとって、「ドッキリだったよ〜ん」。そこで爆笑をとるつもりでした 

白河:ところが誰も笑わなかった。

DJ社長:はい。 「イエーイ、結局、坊主頭も特殊メイクだし、炎上商法だぜ~」みたいなノリで。それで、マキシマム ザ ホルモンさんたちに音楽動画に出ていただいて、最後に僕たちをボコボコにしてもらって、「お前らパワハラはダメだ、炎上商法はダメだ」って言ってもらって、終わりという筋書きでいました。

だから、俺の中では、実は、「パワハラはダメ」っていう一連のストーリーとして完結したつもりだったんです。

白河:そ、そんな単純なノリだったんですね。

DJ社長:はい…。

白河:まず、今回のドッキリは、パワハラじゃなくて、セクハラですよね。

DJ社長:そうなんですね…。よくわかってない人が多くて、そのままパワハラで統一して話してます。

白河:パワハラの中にセクハラが入っているのだけど。社長が弱い立場の従業員にホテルに来いとか言うなんてパワハラでもあるけど一番たちの悪い部類のセクハラなんです。でも、なぜ炎上させるにしても、その題材がセクハラだったの? 実際にセクハラしたわけじゃないですよね?

DJ社長:いや、本当に、これは誓っていいますけど、1000%ないです。まったくないです。

それに、本当にやってたら、流石にこんなドッキリを自分で企画できないですよ。 

ドッキリの言い訳に聞こえると思うのですが、「LINE送った、(ホテルに行くのは)未遂の状態」で、それでも坊主にまでなって謝ってるんだから、許してもらえると思っていました。

白河:だけど、世間は「坊主になったぐらいで許されると思うなよ」って怒り狂った。

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Mariko Shimbo

 

DJ社長:はい。正直、それに一番びっくりしました。「な、なんで?」って。その時点では、未遂という状態で謝罪している、つまり被害者はいない。なのに、どうしてみんなこんなに怒っているのか、全然わからなくて慌てました。

その後の、オチになるはずの謝罪動画も、コメント欄が荒れに荒れて、大炎上になり、関係のないホルモンさんたちまで、ものすごい炎上してしまって。

今削除されているのですが、まさかそんなことになるとは、本当に思っていませんでした。彼らは、僕たちを怒る役目で動画に出てもらっただけなんです。

白河:ホルモンさんたちとのコラボの仕事だったのでしょうか?

DJ社長:違います。完全にノーギャラの友情出演です。

白河:そうだったんですね。ホルモンさん、かわいそうに。でも、あの削除されたPVを見ていると、ホルモンさんたちもあなたたちと演奏するのが楽しい感じが出ていたのね。だから、ダメと言ってる役目だけど、内輪感というか、仲良し感も出ちゃったんだと思う。

DJ社長:そうですね、彼らには、今回のことに巻き込んでしまったことを、心から申し訳ないと思っています。

白河:ジャスミンさんは、DJ社長の彼女だと思っている人もいるけれど?

DJ社長:いいえ、誓って違います。プロフェッショナルなアーティストとして、うちの会社と専属契約しています。もともと彼女は福岡出身で、俺らの福岡時代からの知り合いなんです。

アーティストになりたい、デビューしたいという強い思いがあって、いろんな大手事務所をいくつもいくつも回って頑張ってきてた子だったんですけど、なかなか芽が出なくて、うちの事務所に所属することになったばかりだったんです。

白河:彼女自身は、今回の企画にノリ気だったんですか?

DJ社長:いや、彼女は専属アーティストだから、社長がうまくいくっていうんだから全部任せます、良いようにプロモーションしてください、っていう感じで、俺の指示に従っただけです。

白河:じゃ、彼女も被害者というわけですね?

DJ社長:はい。これだけの騒動に巻き込んでしまって、これから売れていくぞっていう一番未来のある時に、巻き込んでしまった。本当にそこは申し訳なく思っています。

今後、なんとかリカバーさせてあげたい。

白河:今回の騒動で、何を思い考えたか、伺いたいのですが?

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Mariko Shimbo

 

DJ社長:…………(長い沈黙)浅はかで、お前は馬鹿か、と言われるのを承知で、正直に言うと…。種明かししたら「騙された~、良かった被害者がいなくて」ってみんなが笑ってくれて、笑顔になると思ってました。

それが全然違う結果で。でも、本音のところを言うと、あまりにも僕が触れてしまった問題が、深くて。どうすればいいかわからなかったです。 

あれからも、Twitterを見ていて、世の中の男性はこんなにひどいことを女性にしているんだっていうこともわかってしまって。

今までの自分の、なんと言うか無知というか。

白河:怒っている人達は、自分が過去にセクハラされたこととか、周りの友だちが苦しんでいたこととか、そういう過去の記憶を思い出して、辛くなったのかもね。「私あの時に言い返せなかった!」でも「ジャスミンが権力ある人に勇気を持って告発した!すごい」。

そんな風に、過去の自分と向き合っていたのかもしれない。

DJ社長:そうですね。

白河:それに、あなたに権力を使って、女性をものにするようなことをするイメージがなかったから、余計がっかりしたのかなと思います。

DJ社長:はい。それはあるかもしれません。僕は、絶対にそんなことしないです

白河:2017年からの「#MeToo運動」で世の中の潮目が変わったんですよ。

DJ社長:ミーツー? それ、なんですか?

白河:え、#MeToo 知らない? 

DJ社長:知らないです。

白河:今まで、セクハラされても、怖いから言えなかったという人が多かったんです。でも勇気ある人がツイッターで告発した。そうしたら、世界中の女性が、男性も、「私もこんな目にあった」とつぶやき出した。

だけど、「絶対におかしいことだったんだ」って、言えるようになったのは本当に最近のことで、そのムーブメントが#MeTooをきっかけに起きたんです。 

嫌だなと思っても、「仕方がない」って我慢するのは、もうやめにしょう。他にも嫌な目にあう人が出ないようにしよう。そう思って勇気を振り絞って声をあげる人がいて、その後に続く人がいて……というのが#MeTooなんです。 

DJ社長:言えないのは、嫌われたらどうしよう、ってことですか? 

白河:いや、そんなレベルじゃない。セクハラを訴えて、逆に自分がクビになったり、仕事を干されたりしたらどうしようって思ってる。みんながずっと我慢していたの。仕事や自分の生活がかかってるから。 

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Mariko Shimbo

DJ社長:SNSが普及しているので、今では気軽に発信できるようになりました。昔と違って、嫌なことをされたら手軽にTwitterで晒せます。誰でも告発できるようになったのは、いい時代だなと思います。

白河:いや、手軽に発信できるようになっても、告発する側は、死ぬ思いで告発するんですよ。告発したらひどい言葉を浴びせられて、告発した方が炎上する。 仕事だってやめさせられるかもしれない。

DJ社長:え?

白河:これはセカンドレイプと言うんだけど、「枕営業じゃん」「女もそれでいい思いしたんでしょ」なんて言われる。

DJ社長:セカンドレイプ? 

白河:レイプをされても、男性の方じゃなくて女性の方が「お前の方が悪い」「挑発的な格好してたからだろ」って、責められる。被害者がもう一度精神的にもレイプされるの。それも関係のない他人から。ジャスミンさんだって逆に責められていたのを見たでしょう?

DJ社長:……。

白河:例えば、痴漢もそうなの。女子高生が電車に乗っていて痴漢に遭ったって、「短いスカートを履いてたから、お前が悪い」って言われるの。

DJ社長:え? そんな。痴漢されて?

白河:そうなんです。だから手軽に告発できるようになったところで、女性にとって声を上げるって、とてもつらいことなの。でも、なぜ告発するのかって聞いたら「他にも同じ被害に遭っている人がいるから、自分が言わないことで、被害に遭う人がいるかも」って、ものすごい勇気をふりしぼっているの。

でも結局は、信じてもらえなかったり、ものすごく叩かれたりする。嘲笑される。個人情報も晒される。 

DJ社長:完全な被害者で証拠があっても、被害者が叩かれる…ですか。

白河:だからあなたが結局は「パワハラ、セクハラはダメだよ」と言おうとしていたとしても、セクハラを自分たちのプロモーションのために使ったということ自体が、みんなが勇気を振り絞ってなんとかやってきた真剣な告発を茶化したことになっちゃったんです。

DJ社長:……。

白河:これから先、必死の思いで告発した子たちがみんな「また嘘なんじゃないか」「売名なんじゃないか」って叩かれることになったわけですよ。それじゃ、何の希望もないじゃないですか。 

DJ社長:そうですね…。

僕は、そういうことで苦しんでいる人たちのために、「パワハラ、セクハラダメ」と言ったわけじゃなくて、単に、自分たちのためのプロモーションのネタにしてしまったわけなので。

白河:でも、女の子を利用するやつがダメって、それは共通理解ですよね?

DJ社長:もちろんです。僕自身は、セクハラとか本当にめちゃくちゃダメだろって思います。僕は、悪いことは絶対にしたくないし、女性から搾取とか、悪いことをしている人とは絶対に関わりたくない。パワハラもセクハラも、当たり前にダメだからダメだと思っています。 

白河:それが聞けてよかったです。

DJ社長:あとは、今日、お話聞いて、まだまだ、僕は本当の意味で、セカンドレイプって言うんですか?  そういう経験を持っている人たちのことは、わかってなかったです。過去とか思い出して、ドン引きして辛い気持ちにさせてしまったんですよね。僕のふざけた企画で。

白河:そう言ってもらえると、今日お話しできて良かったと心から思います。若い人たちにすごくあなたは影響力があるから。

DJ社長:これだけは言えるのは、俺を見て同じことやろうとするやつはいないと思います。少しはこういうことやっちゃいけない、と言う認識がみんなにできたことは、貢献できたかもです(苦笑)。

(聞き手・白河桃子  構成・坂之上洋子、石川香苗子  編集:笹川かおり)

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