「自粛して。警察呼びます」とライブバーに張り紙。「残り少ない手段、取り上げないで」と店主

自粛を求める張り紙が見つかった東京・高円寺のライブバー。近隣住民からの苦情に向き合う店長に、話を聞きました。

4月26日、東京・高円寺のダイニングカフェ&ライブ小屋「高円寺いちよん」で、営業中止を求める紙が張られているのが見つかった。店主はハフポスト日本版の取材に「残り少ない手段を取り上げないで」と訴えている。

張り紙には、

安全のために、緊急事態宣言が終わるまでにライブハウスを自粛してください。次発見すれば、警察を呼びます。 近所の人

と書かれている。店長の村田裕昭さんによるこのツイートが、今Twitterで議論を呼んでいる。

新型コロナウイルスの感染拡大を受けて「高円寺いちよん」は4月10日から5月6日まで休業している。同店は、居酒屋・バーにあたる飲食店。ライブに重きを置き、出演者にノルマを課さない「飲食店内でのインストアライブ」をメインの業態としている。

店長の村田裕昭さんによると、同店では26日の夜、元々はシンガーソングライター・のうじょうりえさんのライブを予定していたが中止になっていた。その代わりに、無観客での配信ライブを行っていた。

ツイキャスを使った有料配信で、チケットの売り上げの半分は「いちよん」に寄付される方式。

ライブの様子をスマートフォンで撮影し、マイクやスピーカーなどの機材を使用していた。店内には、のうじょうりえさん、村田さんとその家族の計3名だけがいた。感染を予防するため2メートルの棒を使用し、それ以上は互いに近づかないようにしていたという。

ライブ配信の前後には、室内も換気し、「3密」の状態を発生させないための取り組みがなされていた。

村田さんはこの張り紙に対し、「ライブを自粛しろという人がいるのは重々理解している。でも、若いミュージシャンは数カ月ライブをやらないだけでチャンスを失っていくから、文化としての音楽をどうにか守りたい。長期戦になるだろうから、配信でやっていくしかないと考えていた矢先にこの張り紙だったので、出鼻を挫かれてしまったような気持ちでした」と話している。

都では、施設の使用停止や営業時間の短縮に全面的に協力する中小事業者に対し、協力金を支給する「東京都感染拡大防止協力金」の政策を行っている。ライブハウスも対象となり、公式サイトでもこう明言されている。

休業期間中、従業員による施設の清掃や設備の改修等で施設に立ち入っても、営業していることには該当しません。

また、無観客で、オンライン配信用のライブを行うことも問題ありません。

ただし、同時に複数の演奏者等を出演させないなど「三密の状態」を発生させない使用に努めていただくことが必要です。

現在、新型コロナの影響でライブイベントが中止や延期となり、多くのライブハウスがオンライン配信を通してどうにか収入を得ている状況だ。2月末から公演キャンセルが相次ぎ、すでに2カ月が経とうとしている今、オンライン配信の道さえも途絶えてしまったら、閉店せざるを得ない店舗はさらに増加するだろう。

オンライン配信は、ライブハウスとミュージシャンにとってOKとされている残り少ない手段。それまでも取り上げられてしまったら困ります。3密に配慮した上でのオンライン配信は問題ないと東京都によって公言されていますし、このように非難されるのは行き過ぎではないかと感じます」(村田さん)

「高円寺いちよん」では、今後も出演者と相談しながら無観客でのライブ配信を続けていくつもりだという。