足立区議への抗議署名、副区長が受け取り「何ができるのか、当事者の皆さんにお聞きしたい」 意見交換で語られたこと

同性愛に差別的な発言をした足立区議に対する抗議署名約3万3000筆や、パートナーシップ制度の制定などを求める要望書が提出された。
抗議署名と要望書を受け取る長谷川勝美足立区副区長(中央右)

「レズビアンやゲイが広がってしまったら、足立区は滅びる」といった同性愛者に差別的な発言をした足立区の白石正輝議員に謝罪と発言撤回を求め、「足立・性的少数者と友・家族の会」が10月13日、オンライン署名約3万3000筆を近藤弥生区長宛てに提出した。

区側は長谷川勝美足立区副区長が直接応対。署名提出後は同団体メンバーに加えて団体には参加していない当事者らも参加した意見交換が行われ、副区長は「私たちも今まで性的マイノリティの方々をまず知ろうと進めてきました。次何ができるのか、どういうところで生きづらさを感じているのかを直接当事者のみなさんにお聞きしたい」などと話した。

当事者らはどのような思いで意見交換に望んだのだろうか。それぞれの話を聞いた。

「私もあなたも、かけがえのない存在」と言える世の中を

署名の提出後、意見交換が行われた

意見交換に電話で参加をした鈴木茂義さんはこの日、パートナーシップ制度の制定などを求める要望書を区長宛てに提出した。鈴木さんはゲイを公表しており、足立区の小学校で教諭として9年間の勤務経験がある。署名を提出した「足立・性的少数者と友・家族の会」のメンバーではないが、この日の意見交換に共に参加した。

ハフポストの取材に対し、自身が教員生活をスタートさせた足立区に「恩返しがしたい」という気持ちがあって要望書を提出したと語った。

「自分を育ててくれた足立区の子供たちや保護者、地域に恩返ししたいという気持ちがありました。先生でありゲイであることをカミングアウトはしましたが、それ以降にアクションを起こしてないなと感じていました」

要望書ではLGBTQ当事者と友人・家族の相談窓口の設置や、区民に向けた多様な性についての理解促進の取り組み、教職員や保護者など教育現場における人権教育の推進を求めている。

「大事なことは、見えても見えなくても『互いの違いを尊重し、行動する』ということです」

「『私は大切な存在である。私の隣にいる人も私と同じくらい大切な存在である』ということを、(大人も子どもにも)人権教育の充実を通して考えたいものです。“I’m OK, you are OK!(私はかけがえのない存在です。あなたもかけがえない存在です)” と言える世の中を目指したいです」

「自分は普通じゃない」という気持ち、受け継いでほしくない

長村さとこさん

「私も今の足立区に戻るのはできないと思うのは、生まれ育った街で生きる不安があるからです」

意見交換で長谷川副区長にそう伝えたのは、当事者団体「一般社団法人こどまっぷ」代表でレズビアンを公表している長村さとこさん。足立区出身で、今は新宿区で暮らしている。長村さんも「足立・性的少数者と友・家族の会」のメンバーではないが、この日の意見交換に共に参加した。

「婚姻制度もない不安定な中、同性カップルだけではなく親子関係の法整備も整っていないため、医療機関での不妊治療も受けられず国からも区からの助成金も受けられずの状況です」

「出生率の向上を発信するのであれば、このような課題なども足立区から国に働きかけられるような、そんな区にしていただきたいと思っています」

長村さんはこの日、長谷川副区長に絵本を渡し、その中には10月15日出版予定でパートナーとの共著作品『あおいらくだ』があった。旅に出た「あおいらくだ」が「茶色いらくだ」と出会い、お互いの違いが驚きから楽しさや素晴らしさに変わっていく物語だ。

「あおいらくだ」を渡した理由とは。ハフポストの取材で、絵本の後書きにその思いが込められていると話した。

人はみんな違います。

自分ではない人のことはわかりません。

だから、決めつけず、耳をすまして、たくさんの想像力を持って、相手に接する。

そうすれば、それぞれの「違い」が、「自分らしさ」として、素敵な個性になるのだと思います。

自分のこと、自分でない人、違いを持った人同士が、お互いを大切にできる社会は

たくさんの人にとってもいきやすい社会だと信じています。

この絵本が「違う」ことに勇気を持つ、一助になれば幸いです。

あおいらくだのように、ありのままの姿に「OK」をだして

旅をしよう

『あおいらくだ』などの絵本を長谷川副区長に渡す長村さん

かつて親に「レズビアンなんて存在しない」と言われ、自身も足立区の「あおいらくだ」だった。この本は子ども達だけでなく、大人にも届けたいと長村さんはいう。

「子ども達には、言えない・相談できない苦しみや、『自分は普通じゃないんだ』と思うような気持ちを受け継いでほしくないって思っています。知識がない分だけ間違えた言葉を使ってしまったりするかもしれませんが、それは教育現場の大人たちも受け止める力を持って、子供たちと一緒に成長していかなければなりません」

「いない」のではなくて、「言えない」環境がおかしい。長村さんは多様性を学ぶ機会を作っていくことで、差別的な発言が肯定されないような状況を作っていきたいと話す。

「一緒に想像力を持って、誰が『あおいらくだ』なのか。自分のどこに『あおいらくだ』がいるのか。自分なりのマイノリティー性や当事者性がどこにあるのかといった、想像力を持ちながら人と接するきっかけになれたらいいなっていうのが、多様性が謳われる中で今一番発信したいことです」

白石議員は本会議で謝罪の意向

長谷川足立区副区長

白石議員に対する抗議署名を行った団体「足立・性的少数者と友・家族の会」はこの日、鹿浜昭議長宛てで議会に陳情も提出し、白石議員の厚生委員会委員長を解任もしくは辞任の要求や、区議会議員にセクシュアル・リプロダクティブ・ヘルス/ライツ(性や生殖に関する健康と権利)の義務化などを求めた。

白石議員は9月25日の区議会で少子高齢化に関連して「L(レズビアン)やG(ゲイ)が法律で守られているじゃないかという話になったら足立区は滅んでしまう」などと発言し、その後「差別的だ」「事実に基づかない」と批判が殺到。

毎日新聞の取材では「謝罪する気は全然ない」と答えていたが、10月12日に足立区議会は白石議員から謝罪と発言撤回の申し出があったと発表。10月20日の本議会で行うという。