「また黒人虐殺の責任が取られなかった」ブレオナ・テイラーさんを射殺した警官の殺人罪起訴なし、大規模な抗議に

アメリカ各地で、多くの人が怒りと失望を表しています
大陪審の判断を聞いて反応する人々(2020年9月23日)
大陪審の判断を聞いて反応する人々(2020年9月23日)
Carlos Barria / Reuters

黒人女性のブレオナ・テイラーさんが警察官に射殺された事件で、ケンタッキー州・ルイビルの大陪審は9月23日、3人の警察官のうちブレット・ハンキンソン容疑者のみを隣家を危険にさらした罪で起訴するという判断を下した。残りの二人は起訴されなかった。

警察官が誰一人として殺人罪で起訴されなかったことに、アメリカ各地に怒りや失望が広がり、抗議活動が起きている。

無関係の捜査で失われた命

テイラーさんは3月13日午前1時頃、自宅アパートで恋人と就寝中に、警察が捜査に入ってきた

何者かが“ノックをせず”、破城槌を使って部屋に入ってきたことに驚いた恋人のケネス・ウォーカーさんが緊急通報し、侵入者に向けて発砲。

警察官らは20発以上を発射し、そのうちの6発が当たってテイラーさんは亡くなった。

警察官は麻薬捜査の捜査令状をとっていたが、その内容はテイラーさんともウォーカーさんとも無関係だった。探していた人物はテイラーさんのアパートの住所には住んでおらず、後にすでに逮捕されていたことが明らかになった。

ウォーカーさんがかけた緊急通報の記録には、「何が起きているかわかりません。誰かが押し入って、彼女が撃たれました」という声が残されていた。

警察官はボディカメラをつけておらず、令状に書かれていた麻薬はテイラーさんの自宅からは見つからなかった。

アメリカ各地で抗議活動に発展

ケンタッキー州のダニエル・キャメロン司法長官は23日の記者会見で、ハンキンソン容疑者の起訴は、撃った銃弾が近隣のアパートの部屋に到達して危険を及ぼしたことによるもので、残りの二人の警察官は正当防衛が認められたと説明した

ルイビルでは、判断を聞いた多くの人たちが怒りを表明し、広場に集まっていた人の中には「信じられない」と叫んだり泣き出したりする人もいた。そしてルイビル中心部で行われた抗議デモに、何百人もが加わった

一部で警察との小競り合いが起き、警察がデモ参加者を逮捕したり、警棒で殴打したり「ペッパーボール」と呼ばれる催涙弾を発射する場面も見られた。

また、ルイビルメトロ警察のロバート・シュレーダー署長代行は、二人の警察官が撃たれたと発表した。一人は手術を受けたが、二人とも容体は安定しているという。

抗議活動はルイビルにとどまらず、ワシントンD.C.やニューヨーク、フィラデルフィア、シカゴ、アトランタにも広がった。

ルイビル

ワシントンD.C.

ニューヨーク

シカゴ

アトランタ

テイラーさんの家族の弁護人を務めるベン・クランプ氏は、不起訴はありえない判断であり、起訴された警察官は「殺人罪で起訴されるべきだ」とTwitterで訴えた

そして「また、白人の警察官による黒人の虐殺の責任が取られなかった」と、失望を表したものの、闘いを続けると表明した。

ハンキンソン容疑者は、事件の3カ月以上後に免職になった。起訴されなかった二人の警察官は、有給の休職扱いになっている。

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