「笑いは弱者を攻撃するためのものじゃない」コメディアンがブリトニー・スピアーズをネタにしなかった理由

スピアーズ氏のドキュメンタリーが放送された後、あるコメディアンの発言が再び話題になっています
「レイト・レイト・ショー」の司会をするクレイグ・ファーガソン氏(2007年9月25日)
「レイト・レイト・ショー」の司会をするクレイグ・ファーガソン氏(2007年9月25日)
Frederick M. Brown via Getty Images

ブリトニー・スピアーズ氏のドキュメンタリー「Framing Britney Spears」が放送された後、一人のコメディアンの発言が再び話題になっている。

「Framing Britney Spears」は1990年代からスピアーズ氏の私生活を面白おかしく取りあげてきたメディアや、後見人を巡るバトルを描いたもの。

彼女が受けてきた扱いは「拷問だ」、と放送後に多くの著名人たちが声をあげ、#FreeBritney(ブリトニーを自由に)ムーブメントに加わっている

笑いは弱い人を攻撃するものじゃない

そんな中で注目されているのが、アメリカのトークバラエティ「レイト・レイト・ショー」前司会者のクレイグ・ファーガソン氏の発言だ。

ファーガソン氏は2007年2月に放送された同番組で、スピアーズ氏をジョークのネタにしないと宣言した。

当時スピアーズ氏は精神的に不安定な状態にあり、リハビリ施設に通っていた。番組の数日前には、パパラッチらが見ている中で、自らの手で頭髪を剃った

時事ネタで笑わせるのを生業とするファーガソン氏。しかしその日の放送でスピアーズ氏をジョークのネタにしない理由をこう説明した。

「私にとってコメディとは、一定の面白さがあるべきものなんです」

「笑いは権力を持った人たちを攻撃するためのものです。政治家やトランプや、自慢ばかりする人を攻撃するためのものであり、弱者を攻撃するものじゃない」

「最近、私は自分自身がその目的からちょっと外れてしまっているように感じます。少し軌道修正したい。だから今夜は、ブリトニー・スピアーズのジョークはナシです」

コメディアンの真面目な発言を聞いた観客は、ファーガソン氏がその後に態度を一転させてスピアーズ氏をネタにすると思ったようだが、そうではなかった。

スピアーズ氏の行動に触れる代わりに、ファーガソン氏は自分自身のアルコール依存症の過去を語った。そしてスピアーズ氏は明らかに「助けを必要としている」と述べた。

「この週末、彼女はリハビリ施設を出たり入ったりしていました。彼女は頭髪を剃り、タトゥーを入れた。それが彼女がこの週末にやったことです」

「この日曜日、私はアルコールを止めてから15年になりました。彼女の週末と自分の週末を比べて思ったんです。『自分の週末の方がいい』って」

クビになると思ったけれど…

2019年のロサンゼルスタイムズのインタビューで「発言で番組を解雇されるかもしれないと思った」とファーガソン氏は明かしている。

それでもスピアーズ氏を擁護したのは、メディアによるスピアーズ氏の描かれ方にショックを受けたからだという。そしてファーガソン氏の心配に反し、発言は好意的に受け止められた。

「『この発言で解雇されるかもしれないな』と思いましたが、実際は全く反対のことが起きました。みんながとても喜んでくれているようでした」とファーガソン氏は語っている。

放送局や制作会社からのネガティブな反応はなく、翌日にはハリウッドで働く人たちなどから、発言をサポートする電話が次々とかかってきたという。

勇気を出して発言した理由を「その週末のスピアーズさんの立場に立って考えて見たかったからです。そしてあなたの気持ちが私にはわかる、不快な気持ちがわかると伝えたかった」とファーガソン氏は説明している。

そして「私がそうしたことで、ほかに人たちも、共感してくれました」と回顧している。

ハフポストUS版の記事を翻訳しました。(翻訳:安田聡子 @satokoysd

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