政治が不安だから「小6の教科書」を読む。子どものころピンと来なかった言葉が”武器”になる

5月19日(火)21時からの「ハフライブ」で、大人の学びについてロンブーの田村淳さんと話します。その前に考えたこと
『これでわかる 社会小学6年 参考書+テスト』(文英堂)
『これでわかる 社会小学6年 参考書+テスト』(文英堂)
Ryan Takeshita

5月19日午後9時から生配信するハフポスト日本版のTwitter番組『ハフライブ』のテーマは「大人の学び」です。

現役大学院生でもあるロンドンブーツ1号2号の田村淳さんがゲスト。立教大学の中原淳教授も参加します。生配信で、視聴は無料です。

「大人の学び」というと、MBAやプログラミング、英語や資格の勉強というイメージがありますが、もし時間があれば「シティズンシップ・エデュケーション(市民教育)」について番組中に話し合いたいと思います。

横文字で偉そうな言葉ですが、「為政者がつくった法に従順に従うのではなく、むしろ必要とあらば自分たちの力で法を変革し、悪しき法改正には言論を通じて抵抗」することを学ぶ教育だと私は思います(カギ括弧内は『政治学をつかむ』有斐閣 より引用)。

18日、検察庁法改正案の今国会の成立が見送られました。この10日間、Twitterで議論は盛り上がりましたが、流れについていけず、この問題をどう考えたら良いのか分からないという声もありました。

そんなとき、どうしたら良いの? 今回の検察庁法にかぎらず自分がモヤモヤとした政策にはどう向き合うべきなの? 意外にも学校の「教科書」を読むことが大きな武器になります。

「これでわかる 社会小学6年」
「これでわかる 社会小学6年」
Ryan Takeshita

寝る前に子どもの古い教科書を読んでみる

私は、中学1年生の長男が使っていた小学校の教科書などを捨てずに取っています。それを、寝る前に読んでいます。在宅勤務は仕事も家事も家庭教育も、3つ重なってキツいのですが、ベッドに入って10分ぐらい目を通すだけでも自分が変わります。

たとえば『これでわかる 社会小学6年』(シグマベスト 文英堂)。ページを開くと、検察庁法改正で話題になった三権分立については、次のようにシンプルに書いています。

「国会が立法権を、内閣が行政権を、裁判所が司法権を受けもち、それぞれが独立してほかの仕事や権力を尊重しあう」

「権力を1つに集中させると、独裁などで国民の自由や権利が失われるおそれがある」

検察官の定年延長によって、いきなり三権分立が崩壊するわけではありません。

ただ、政権が人事に口を出して「権力が集中する」ことの恐ろしさは、この参考書の記述や図を見るだけでも分かってきます。

Twitterで流れてきた「三権分立の図」をあわてて見て、何のことだったけな、とWikipediaを調べるより、普段からこうした教科書に、なじんでおくとニュースに対する構えができます。問題集も解くと分かってない自分にも気づかされます。

 (Photo by Buddhika Weerasinghe/Getty Images)
(Photo by Buddhika Weerasinghe/Getty Images)
Buddhika Weerasinghe via Getty Images

小学生の頃は「ピンと来なかった」教科書が今だと分かる

ついでに、さっきの小6用の教科書(参考書)から印象的な箇所をもうひとつ。

「世論は、新聞・雑誌・インターネット・テレビなど、マスコミ(マス=コミュニケーション)のえいきょうを受けたり、署名運動などによって人々に伝えられることでひろまり、つくられていきます。ですから、世論にとっては、もとになる情報が大切になります」

小学生だったとき、似たようなことを習ったのでしょうが、当時はピンときませんでした。でも、大人になってニュースに触れたあとに改めて読んでみると、シンプルな記述を読むだけで、政治の原理原則がわかり、モヤモヤがクリアになるはずです。

今も法案について多くの人が反対の声を上げて、ハフポストでも積極的に記事にしています。

一方、「まだこの問題がわからない」「会社の同僚や友人が見ているかもしれないTwitterに投稿するのは抵抗がある」という人もいました。私も意見が定まらない政策がいくつかありますが、「まずベースとなる政治の考え方を教科書で知る」だけでも、大きな一歩となります。

高校や小学校の参考書
高校や小学校の参考書
HuffPost Japan

佐藤優さんは「高校の教科書」を大人にすすめる

元外務省主任分析官で作家の佐藤優さんもビジネスパーソンこそ高校の教科書を読むべきだと言っています(『調べる技術 書く技術』SB新書)。

オススメなのが『理解しやすい 政治・経済』(シグマベスト 文英堂)。テレビでニュースを見ているときに手元に置いておくと便利です。

最初の方で「政治」の捉え方についていくつかのパターンを解説しています。

「集団現象説: 政治の機能は、国家にのみ特有の現象ではなく、企業・学校など、すべての組織された人間集団にみられる現象とする見方である」

歌手のきゃりーぱみゅぱみゅさんが、「 #検察庁法改正案に抗議します」関連のTweetをしたことで「芸能人は、政治的な発言をするべきか」という議論になりました。

何かがおかしいなと思って声を上げて、人を説得することは、オフィスや教室でもやること。芸能人や歌手という職業に関係なく、みんなどこかしら“政治的”。

自分の生活に根ざした価値観にそって「NO」と声をあげるのは当たり前のことで、身構える必要がないのでは、と勇気がわいてきます。

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imtmphoto via Getty Images

「日本の淀みは20年前から…」

冒頭で書いた「シティズンシップ・エデュケーション」は、イギリス在住のライター、ブレイディみかこさんも注目しています。

イギリスでは、ブレア政権(1997年〜2007年)のときに、学校に導入されました。

ブレイディさんの子どもが通う現地の学校で、「子どもの権利を三つ挙げよ」「エンパシー(共感)とは何か」という問題が期末試験で出てきたそうです(『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』新潮社)。

「日本と海外とは違うよ…」「イギリスの政治もうまくいっていないのでは?」とも思いますが、それは脇に置いて、先ほど紹介した「『理解しやすい 政治・経済』のページを開けば、「グローバル競争に合った『能力主義』と、安定した『日本型雇用』はどっちがいいか」などの問いかけのページもあり、先生に授業中にあてられたと思って、10分だけ自分に問いかけるだけでも大きな差が生まれるのではないでしょうか。

ブレイディさんは最近のインタビューで新型コロナ後の社会について触れ、「いま日本が淀んでいるのだとするなら、きっとそれは20年前の淀みを取る種をまかなかったから。長期的な視点で地道な教育の改革を行えば、20年後に社会は必ず変わっているはずです」語っていました。

hufflive
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Maya Nakata

19日午後9時から生配信します

番組にお呼びする田村淳さんは最近、相方の田村亮さんも所属する「株式会社LONDONBOOTS」をたちあげました。シリコンバレーに行ったり、eスポーツビジネスに関わったり、従来のタレントの枠を飛び越えた活動をしています。

吉本興業は、所属タレントの働き方をめぐって問題が指摘されましたが、シティズンシップ・エデュケーションとは究極のところ、「自分で考えて、いざというとき自分でアクションを起こす」ことを学ぶことだと私は思います。

コロナによって、政治だけでなく、私たちの働き方も変わるなか、個人はどうしたら良いのか。なぜ田村さんは学んでいるのか。

番組では、「誰でも気軽に出来る大人の学び」とともに、そんなことも話せたらと思っています。19日午後9時からです。よろしければご覧ください。

視聴(無料)はこちらから。時間になったらスタートします▶
https://twitter.com/i/broadcasts/1LyGBNoBljEG

番組概要はこちらから▶

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