PRESENTED BY JINS

メガネの常識を覆してきたJINSが今「事業そのもので社会貢献する」と語る理由

経営危機を乗り越えてきたJINS。起死回生の鍵は「ビジョン」の設立にあった。メガネの枠組みを超え、人の心と体を測定できるデバイスなどを研究開発する理由とは。

2001年にアイウエア事業に参入して以来、「メガネ」の常識を覆す価格や機能、サービスを次々と打ち出してきたアイウエアブランド、JINS。国内外に658店舗を展開するまでに成長した今、メガネという枠すら超え、社会課題の解決に取り組もうとしている。

田中仁社長は、経営危機を乗り越えた末に、これからの企業は「事業そのもので社会貢献する」のが望ましい姿、という思いにたどり着いた。人の心と体を測定できるデバイスなど研究開発を進める田中社長に、現在の境地に至った経緯をたずねた。

田中仁(たなか・ひとし)氏:株式会社ジンズホールディングス代表取締役CEO。1963年群馬県生まれ。1988年ジェイアイエヌ設立、2001年アイウエアブランド「JINS」を開始し、現在は国内外に約658店舗を展開(2021年5月末現在)。2014年、群馬県内で田中仁財団を設立し代表理事に就任。会社経営の傍ら、地域活性化活動にも取り組む。
田中仁(たなか・ひとし)氏:株式会社ジンズホールディングス代表取締役CEO。1963年群馬県生まれ。1988年ジェイアイエヌ設立、2001年アイウエアブランド「JINS」を開始し、現在は国内外に約658店舗を展開(2021年5月末現在)。2014年、群馬県内で田中仁財団を設立し代表理事に就任。会社経営の傍ら、地域活性化活動にも取り組む。
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■経営危機で気づいた「ビジョン」の重要性

━━ 「メガネ」にビジネスチャンスがあると考えたのは、どんな経緯からでしょう。

2000年に韓国へ行った時、日本では平均3万円ほどで売られているメガネが、3000円程度で店頭に並んでいるのを見て「なぜ、こんなに安いのか?」と素朴な疑問がわきました。調べてみると、日本のメガネ業界は複雑な流通経路がネックとなり、コストがかさんでいることが分かりました。当時はユニクロのフリースが大ヒットしていた時代。そこでメガネも企画から製造、販売まで一気通貫することで、もっと安く、皆が楽しめるメガネを販売できると考えたのです。

起業とは、道にあいた穴を埋めるような営みです。通行人、つまり消費者が不自由を感じている「穴」を、うまくふさぐことができた企業が成長します。当社はメガネ業界という道路の「値段が高い」という穴を埋めることで顧客のニーズに応え、成長の糸口をつかみました。

━━ しかしその後、経営危機に陥ってしまったと聞いています。なぜでしょうか。

2006年に大阪証券取引所ヘラクレス(現JASDAQ)に上場し、資金繰りにゆとりができたことで、慢心してしまったのです。さらにリーマン・ショックが重なり、2008年には株価も急落しました。

shunsei.takei

振り返れば、事業が沈むのはチャレンジが足りない時です。しかし、チャレンジには勇気がいる。その勇気を出すときに、支えとなるのがビジョンです。危機に直面して初めて、ビジョンを明確にしなればならないと気づいたのです。

自問自答の末にたどり着いたのが、JINSの製品のおかげでよく見えるようになった、ライフスタイルが新しくなった…と人々に感じてもらいたい、という思いです。これを元に「メガネをかけるすべての人に、よく見える、よく魅せるメガネを、市場最低・最適価格で、新機能・新デザインを継続的に提供する」という初期のビジョンをつくりました。

■「病気の予兆を見つける」可能性を探る。メガネを超えた製品開発

━━ 初期のビジョンを打ち出してから、経営は変わりましたか。

大きく変わりました。例えば、もともとメガネは視力矯正を目的としたものでしたが、2011年にブルーライトカットメガネ「JINS PC(現JINS SCREEN)」を発売。学術機関と共同研究を重ねることで生まれたエビデンスにもとづいた製品は人の役に立ち、売れることを実感しました。視力矯正が不要な人もメガネをかける新たなきっかけをつくれたと思っています。

その経験を経て、2014年、「人々の生き方そのものを豊かに広げ、拡大する」という現在のビジョン「Magnify Life」を打ち出しました。以来、ジャスパー・モリソン氏ら世界的なデザイナーを起用した商品や、「バイオレットライト」を使って近視進行を抑えるメガネの開発プロジェクトなど、メガネのあり方を追求しています。

━━ 近年は、ウエアラブルデバイスやワーキングスペースなど、メガネという製品を超えて事業領域を広げています。

将来、たとえばもし目薬で近視を矯正できるようになったら、視力矯正器具としてのメガネは不要になるかもしれません。常にイノベイティブな製品、価値の創造が不可欠です。ブルーライトカットメガネ「JINS SCREEN」の発売後も研究を発展させています。信頼される製品のために、エビデンスにもとづいた開発を続けていきたいと思っています。JINSが最初に注目したブルーライトはその後世界中で研究され大きなムーブメントになり、グローバル企業がブルーライトを軽減する機器を開発。今ではPCやタブレット、スマートフォンにもブルーライトカット機能が標準搭載されています。短期的には儲からなくても、力を注ぎ続けることが重要なのです。今後も大人だけではなく子どもも含めた多くのエビデンスを積み上げていくつもりです。

ブルーライトの影響について、研究を続けている
ブルーライトの影響について、研究を続けている
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東北大学加齢医学研究所所長の川島隆太教授との研究開発の中で実現したのが、メガネにセンシング技術を搭載し、集中の度合いなどのデータを収集できるメガネ型デバイス「JINS MEME(ジンズ ミーム)」です。将来的には、この技術で病気の予兆を見つけられる可能性なども探るべく大学等とも研究を進めています。また、これまで得られた成果を生かして、「世界で一番集中できる場所」をコンセプトにしたワークスペース「Think Lab」も開設しました。

■「事業そのもので社会貢献する」企業のあるべき姿

━━ 経営者として、新しいことに挑戦し続けてきた原動力は何でしょうか。

イノベーターとして他の人が思いつかないことを実現したい、社会に新しい価値を生み出し続けたいという情熱です。自分に自信を持つことも大事です。創業当初は若く経験も浅かったので、自信には根拠があまりなかったかもしれません。でも、根拠のない自信がないと、挑戦も失敗もできない。そこから何度も難局から這い上がる中で、いわば「地に足の着いた」自信を積み上げることができました。

経営を通じて多くの人を幸せにしたいという思いも、挑戦へのエネルギーになっています。誰もが自分のためよりも、愛する子どもや人のために行動した方が本当の意味で力を出すことができる。人間には、そういう本能があると思います。

━━ これからの企業のあり方について、どのよう考えていますか。

これからの企業は、事業そのものが社会へよいインパクトを与える、つまり「事業そのもので社会貢献する」のが、望ましい姿だと思います。JINSも研究を続けながら、本当に人の役に立つ商品やサービスを世に出していく、という柱がぶれることはありません。

個人としても出身地の群馬県前橋市で、起業家育成や老舗ホテルのリノベーションを通じた、地域活性化に取り組んでいます。単なる社会貢献としてだけでなく、起業家としての経験やアイデアを町おこしに生かすことができて、活動そのものを楽しんでいますよ。

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