“明るくパワフルなLiLiCo”が誕生したワケ。コンプレックスを本音で語ろう。

好評連載 第4回 LiLiCoの「もっとホンネで話そう。私たちのこと」
タレントのLiLiCoさん
川しまゆうこ
タレントのLiLiCoさん

スウェーデンと日本と、ふたつのアイデンティティーを持つタレントのLiLiCoさん。

“明るくてパワフル”なキャラクターとして、テレビやラジオなどで大活躍されています。

LiLiCoさんは、30年前に来日して以来、独自の視点で日本を見つめ続けてきました。本連載では、そんなLiLiCoさんが、世間を騒がすイシューからプライベートの話題までホンネで語り尽くします。

今回のテーマは、「コンプレックス」。容姿やスタイルなどのほか、年齢、結婚や子どもの有無など、さまざまな生きづらさを抱えている人もいるかもしれません。

実は小さい頃から「コンプレックスだらけだった」というLiLiCoさん。自身のコンプレックスとどう向き合ってきたのでしょうか。明るくてパワフルなキャラクターが誕生した原点を語ってくれました。

“ハーフ”な容姿、コンプレックスだらけだった幼少期

川しまゆうこ

私、幼い頃からコンプレックスだらけなんです。

スウェーデンと日本のハーフだから周りと顔つきが違って“ブス”だし、髪はチリチリのくせっ毛。「酒焼けしてる」なんて言われる低い声も、子どもの頃からの悩み。たくさんからかわれたりもしました。

でも、コンプレックスに対して、自分ができることってあると思うの。ちょっとした機転と、ちょっぴり勇気が必要だけどね。

小さいころから、どうやったらコンプレックスを隠せるか、常に考えてきました。

小鼻が大きいのが嫌で、シンクロナイズドスイミングの選手がつける鼻栓みたいなものを針金で作って、鼻にはめて眠ってたこともあったんですよ。爪が小さいのも嫌で、セロハンテープを10枚ぐらい重ねて、つけ爪みたいなものを作ったりね。

コンプレックスがあっても、悩んだまま放っておくのはよくないと思う。

顔にコンプレックスがあるなら、メイクを工夫するのもいいよね。フルメイクして写真を撮って、全部落としてまたフルメイクして、って実験すればいいのよ。

雑誌に書いてあるとおりじゃなく、自分のためのメイクを探すの。

私は毎日、メイクを変えてますよ。たまにメイクの順番も変えてます。ファンデーションを塗ったあとに赤リップからスタートしたり、マスカラとアイラインの順番を変えたり。意外と、これはいらないなって発見があったりするから。

肌に映える赤いリップ、LiLiCoが誕生するまで

川しまゆうこ

LiLiCoといえば、黒い肌にゴージャスなロングヘア、赤リップがトレードマークじゃない?

でもこれは、コンプレックスを隠そうと試行錯誤した結果。ラッキーなことに、それが日本人にいないキャラクターだったから支持してもらえたんでしょうね。

私、もともとは色白なんです。でも、顔が白いとすーごい“ブス”なのよ。テレビに出ると浮いちゃうぐらい白くて、当時はまったく売れなかった。

ところが、肌を焼いた途端に、「LiLiCo見ると元気になる」って好感を持ってもらえるようになったんだよね。

赤リップは、メイクアップアーティストのピカ子さんに教えてもらったの。

「(顔の)コンプレックスが気になるなら、赤いリップをつけたら? そうしたら、みんな唇にしか目が行かなくなるから」って。

言葉通りにしてみたら、コンプレックスが気にならなくなった。

「LiLiCoは足が長い」って思ってくれてる人も多いけど、これも股下がすごく短いのも嫌で、必ず12センチのピンヒールを履いているおかげ。マラソン番組はしょうがないけど、スニーカーは極力避けてます。

コンプレックスをポジティブに転換する勇気

川しまゆうこ

私の中での一番のコンプレックスは、“ハーフなのにきれいじゃない”ってこと。

日本人って、ハーフはみんな顔がいいと思い込んでるところがあるでしょ? だけど、みんなが(モデルの)長谷川潤さんやローラさんみたいに美人ってわけじゃないからね。

私が売れたのは、開き直って「私って残念なハーフだから」って言う勇気を持てたから。そして、あえて“ハーフ枠”に入らず、“オネエ枠”に近い位置でアピールしていったから。

こうしたキャラ作りは、声へのコンプレックスとも関係があります。

小学生のときから自分の低い声は嫌いだったけど、コンプレックスが大きくなったのは、売れない演歌歌手時代によく「オカマの声」ってからかわれたせい。

当時の主な仕事は、スナックでの営業。「デュエットお願いします」ってお客さんの席に行くと、「オカマとなんか歌いたくねえよ」って断られたり、胸をつかまれて「どうせ作りもんだろ」とか言われたりしたんだよね。

川しまゆうこ

最初は、もちろんすごく傷ついた。

でも、だんだん「おっぱい触るならおしりも触ってよ!」ってふざけて言い返したり、明るくノリツッコミができるようになったりしたら、誰もからかわなくなった。

もちろん無理に自虐する必要はないけど、私の場合はコンプレックスを受け入れて、笑いにして言い返せるようになって、私自身が生きやすくなったのよ。

ただね、この声は欧米人にとって、最高に言い声なんだって。成田空港でご飯を食べてると、「Are you a singer?(あなたは歌手なの?)」って絶対に聞かれる。「あなたの声はとってもセクシーだね」って言われるんだから。

川しまゆうこ

コンプレックスを気にしているのは自分だけ?

コンプレックスを一番気にしてるのは自分なんだよね。人って、意外と気にしていない。

例えば、前に『メイド・イン・ジャパン!』(TBS系)で放送されていたフランス人男性の話。

彼は若いのに薄毛で悩んでいて、好きな女性に告白できなかったの。そこで増毛で自信をつけて告白したら、女性がはにかみながら笑って、彼に大胆なキスをしたのよ。

そのあと彼が「髪の毛が増えてたのわかった?」って聞いたら、「全然気がつかなかった!」って!

私、号泣。めちゃいい話でしょ? 彼がコンプレックスに感じていた薄毛を、彼女は全然気にしてなかった。そういうことだよね。コンプレックスって、自分が勝手に想像した何かなのよ。

同時に、人の褒め言葉は聞き逃しちゃダメ。

「今日着てるセーターかわいいね」「髪型変えたの? すごくすてきだね」って褒められることってあると思う。受け止める勇気を持って。謙遜したり、セクハラだと思ったりしないで、覚えておいて自分に生かした方がいい。

コンプレックスを隠さず話してみた

川しまゆうこ

コンプレックスが見えなくなるぐらい、おしゃべり上手になったりするのもいい。

私だって離婚したてのときは「どうも、陽気なバツイチで~す!」「最近よかったことは、離婚したことです。幸せになってよかった。イエーイ!」って話してた。

そうしたら、だれも「なんで離婚したの?」なんて言わなくなった。

意地悪を言いたい人って、自分に強いコンプレックスがあるから、他人を攻撃したいんだよね。だからコンプレックスを受け入れている人に対して、何か言う勇気なんかないの。

どこかで「しょうがないじゃん」って思うことも大事。

昔、テレビ収録のあと、「今日も完璧な日本語でできなかった」って落ち込んでたら、ディレクターに「あなたは日本で生まれ育ってないんだから、間違えたってしょうがないじゃん。たまには、そうやって考えないと」って言われたことがある。

コンプレックスも含めて、私ってことだよね。

「みんなと同じ」じゃなくていい。理想の生き方は?

川しまゆうこ

結婚してないとか、子どもを持っていないとか……。現在進行形で、他人と比べたり、他人に言われたりして気になるコンプレックスがある人もいるかもしれない。

でも、なぜ他人の視点でばっかり自分を見るんだろう。

きっと「みんな同じがいい」って教育されちゃったからだよね。

小学校のときから同じ黄色い帽子かぶって、中高でも同じ制服着て、っていう生活が普通なんだもん。私はスウェーデンで、小学生のときから個性とは何かを考えさせられているわけだから、スタートが違うんだと思う。

日本人は、自分の人生を生きづらいのよ。他人の求める生き方じゃなくて、自分の理想とする生き方は何かを考えてみたらどうですか?

どうしても結婚したくて仕方ないなら、一度結婚してみればいいと思う。あなた自身は何にも変わらないから。

川しまゆうこ

コンプレックスを気にする毎日を変えるコツは、勇気を出していつもと違うことをすること。

94歳だった私のおばあちゃんも「毎日、通る道を変えなきゃダメよ」って言ってた。毎日、同じように自宅と会社を往復してるだけじゃだめよ。

新しい道を歩いたら、何か発見があるかも知れない。新しいパン屋さんができていた。パンは美味しくて、店員さんもいい人だった。そういう小さなハッピーを見つけるようにしていれば、自分のコンプレックスばかりにとらわれることもなくなるはず。

今日は、通ったことのない道を歩いてみて。メイクを少し変えてみて。誰かの褒め言葉を受け止めてみて。

そんな勇気を持って、自分の人生を楽しんで生きてほしいな。

(聞き手:有馬ゆえ 写真:川しまゆう子 編集:笹川かおり)