「#同意のない性交を性犯罪に」刑法改正求める声広がる。6万筆の署名を国に提出

性犯罪の刑法改正見直しの検討会が、大詰めを迎えている。性暴力と認められない被害をなくすため、署名キャンペーンでは『不同意性交等罪』を創設するよう求めている。
東京駅前で開かれたフラワーデモ(2019年6月)
東京駅前で開かれたフラワーデモ(2019年6月)
Issei Kato / Reuters

同意のない性行為を処罰する「不同意性交等罪」の創設を求める約6万筆の署名が2月10日、法務省に提出された。

Twitterでは、「#同意のない性交を性犯罪に」というハッシュタグを使ったデモが2月11日正午から行われる。署名に賛同する声を刑法改正に反映させるよう訴える声が広がっている。

「同意のない性交を性犯罪に」。なぜ求める声が上がっている?

現在の刑法では、「強制性交等罪」は暴行・脅迫を、「準強制性交等罪」は心神喪失・抗拒不能をそれぞれ犯罪成立の要件としている

署名を呼びかけた「刑法改正市民プロジェクト」は、刑法のこれらの規定が性暴力の実態に見合わず、犯罪と認められない性被害が多く発生しているとして、要件の見直しを求めている。

具体的には、威迫、不意打ち、偽計、欺罔、監禁、無意識、薬物、洗脳、恐怖、障害、疾患などに加えて、「その他意思に反した」性的行為を要件に入れることを訴えている。

署名の提出後、記者会見を開いた同プロジェクトの山崎友記子さん(NPO法人全国女性シェルターネット)は、「どれだけ細かい要件を積み重ねても、枠からはみ出てしまう被害がある」として、「その他意思に反する」を明記する意義を強調する。

不同意性交等罪の緊急署名を呼びかけるページ
不同意性交等罪の緊急署名を呼びかけるページ
Change.org

刑法改正の検討会、どうなっているのか

性犯罪に関する刑法改正をめぐっては、2020年6月から、専門家や性暴力被害に遭った当事者などでつくる法務省の検討会で議論が進んでいる。

10日は、計6万1046人の署名を法務省の検討会座長などに提出した。

性犯罪と認定されるための要件の見直しが前向きに検討されている一方で、「その他意思に反した」の文言を含むか否かは委員の間で意見が分かれている。

委員からは、「その他意思に反する」との表現は「何を意味するのかが曖昧になる問題が生じる」といった意見も上がっている

これに対し、同プロジェクトの伊藤和子さんは記者会見で、「(不同意性交等罪を定めている)台湾などでは、誰から見ても(被告にとって)不当に思われるような事案は有罪になっていない」と反論。「性暴力被害者のうち圧倒的多数が、意に反する性暴力の被害に遭っている実態をしっかり見ていないから出てくる発言だ」と指摘した。

第12回の検討会は2月16日に行われる予定だ。「刑法改正市民プロジェクト」は、検討会に向けてTwitterデモや署名の参加を呼びかけている。

記者会見を開く「刑法改正市民プロジェクト」のメンバーたち
記者会見を開く「刑法改正市民プロジェクト」のメンバーたち
撮影:國崎万智/Huffpost Japan

海外で進む「同意のない性交=レイプ」

法律で「同意のない性行為はレイプ」とする動きは、欧州を中心に海外で広がり始めている。

国際人権NGOヒューマンライツ・ナウの報告書法務省が公開している資料などによると、イギリスは、相手の同意がなく、加害者が「相手が同意している」と合理的に信じていなかった場合は、レイプ罪として最高で終身刑に処すると法律で定めている。

カナダは、同意のない性的な暴行を処罰する性的暴行罪を規定。

台湾は、「暴行、脅迫、脅嚇、催眠術又はその他意思に反する方法を用いて性交した者」を処罰することを刑法に明記している。

スウェーデンの刑法はこれらの国よりさらに踏み込み、「性行為には積極的な同意が必要」とし、『Yes means Yes』型と呼ばれる。

こうした世界の動向を刑法改正の内容に反映させるよう求める意見は、国内の専門家たちの間でも高まっている。

日本学術会議は2020年9月に提言を公表。この中で、「刑法改正にあたっては、諸外国の刑法改正を参考にして、少なくとも『同意の有無』を中核に置く規定に刑法を改める必要がある」と訴えている。

(國崎万智@machiruda0702/ハフポスト日本版)

【UPDATE】2021年2月10日16:40

記者会見の内容を追記しました。

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