15歳に性虐待、養父に懲役18年。「際立った悪質性」津地裁で判決

検察側は「(犯行の)常習性が顕著」などとして、懲役20年を求刑していた。
津地方裁判所(三重県津市)=2014年撮影
津地方裁判所(三重県津市)=2014年撮影
時事通信社

当時15歳の養子に性交や口腔性交を繰り返したなどとして、監護者性交等罪と児童買春・児童ポルノ禁止法違反(製造)の罪に問われた養父に対し、津地裁(柴田誠・裁判長)は1月28日、懲役18年(求刑懲役20年)の判決を言い渡した。

判決によると、被告は2020年12月〜21年5月の5カ月間、監護者としての影響力があることに乗じて、当時15歳の養女に対し、計59回にわたって性交や口腔性交をした。さらに、養女の口腔性交などの動画を撮影して94点の児童ポルノを製造した。

柴田裁判長は判決で、今回の事件において最大の特徴は「同種事案の中で件数が比類ない程に多く、常習性が顕著であること」だと指摘。「本件類型の通常の量刑分布の枠に収まりきらない際立った悪質性があると指摘せざるを得ない」と断じた。被害者がPTSD(心的外傷後ストレス障害)を発症していることにも触れ、「犯行の態様や結果は非常に重大」とした。

一方で、監護者性交等罪の法定刑の上限を下回る量刑と判断した理由について、柴田裁判長は「暴力で被害者を支配していた事案にみられるような凶悪性はなく、妊娠・中絶という最悪の結果が生じた事案と同列に扱うわけにはいかない」と説明した。

量刑相場より重く

監護者性交等罪(5年以上20年以下の懲役)は2017年の刑法改正で新設された。現在の刑法では、被害者が13歳以上の場合に強制性交等罪が成立するには「暴行・脅迫」の要件を満たさなければならない。一方、加害者が親などの監護者の場合、暴行や脅迫の有無は問われない。被害者は精神的にも経済的にも監護者に依存しているため、性交を求められたときに暴行や脅迫がなくても意思に反して応じざるを得ないことが背景にある。

最高裁によると、刑法改正以降に全国の裁判所の判決において監護者性交等罪で処断された事案のうち、宣告された懲役刑で最も長いものは懲役18年(2021年11月末時点、速報値)。

刑法改正後の2017年から2019年までで、全国の地裁において監護者性交等罪で91人に対し判決が言い渡された。このうち「懲役7年以下」が最も多く56人。次いで「5年以下」(23人)、「10年以下」(9人)の順で多かった(法務省『性犯罪の量刑に関する資料』より)。

今回の事件で注目されていたのは、多数回に及ぶ性交や口腔性交、児童ポルノの製造といった犯行が起訴された点だ。

懲役18年を言い渡した津地裁の判決は、監護者性交等罪事件をめぐる従来の量刑の相場と比べても重く、他の罪との併合でも過去最長と並ぶものとなった。

「刑事司法に厳しい目」

性犯罪事件の刑事裁判をめぐっては、2019年3月に無罪判決が4件相次いだことをきっかけに、性暴力に抗議する「フラワーデモ」が全国に広がった。

検察側は論告で、性被害者や支援者らによるデモについて言及。「近時、性犯罪の被害に遭われた方や支援団体等が声を上げ、熱心に活動に取り組み、性犯罪・性暴力の根絶を求める社会的機運が高まってきている」「刑事司法に対し、一般社会から厳しい目が向けられていることを刑事司法に携わる法曹一人ひとりがしっかりと心にとどめなければならない」などと強調し、懲役20年を求刑していた。

注目記事